七宝焼のこと

七宝は金属にガラス質の釉薬をのせ焼成します。表面はガラスのため色の変化は長い時間が経過してもほとんどありませんが、衝撃に弱く落としたりすると割れます。

このコーナーでは七宝焼の特徴や魅力、技法を紹介していきたいと思います。思いつくままに投稿していきますので、七宝焼入門書のような順を追ってきちんとしたものではありませんが筆者が感動したこと、不思議に思ったこと、などをご紹介していきます。





釉薬

七宝の釉薬には不透明・半透明・透明があります。水彩絵の具の白と赤を混ぜるとピンク色になりますが、七宝の釉薬の不透明の白と赤を混ぜると白と赤の細かいブツブツの模様になります。また低温で焼成すると不透明、高温で焼成すると透明に炉の中で変化する釉薬もあります。このことを利用した技法に窯変があります。透明の釉薬は縮む不透明の釉薬は広がる性格を持っています。これを利用した技法が噴釉です。

窯変

普通七宝焼きは800度から850度の温度で焼成しますが、窯変は900度以上の高温の炉の中で焼成します。あまり厚く釉薬をのせたり温度が低すぎると不透明になり、もし素地に模様があってもきれいに出ませんが、高温で薄く釉薬をのせて焼成するときれいな模様が浮き出て、また独特の光が出ます。

マーブル

炉の中で柔らかいアメ状にとけた釉薬を金属の棒でかき回して模様を付ける技法です。同じものは絶対にできません。写真の作品透明釉薬の上にフリットという釉薬が粉ではなく石の塊になったものを置き溶けているときにかき回したものです。


透明の赤

七宝の色の中で最 もきれいだと言われる中の1つに透明の赤があります。赤色というのは結構気難しくて、取り扱い注意の釉薬ではありますが、機嫌良く発色してくれるととてもきれいです。

素地が銀や純銅だと変色します。そのときは下に透明白で一度焼成します。丹銅版はとても発色がいいです。でもこの釉薬はほとんど白です。焼成すると透明の赤、不思議です。

白の釉薬

市販されている七宝の釉薬には白の釉薬が10種類以上あります。各メーカーによって多少の色の違いはありますが、不透明には下引き白、銅白、書き割り白、骨白など、半透明には濃い花白、花白、淡花白、濃いウス半透白、半透白、淡半透白、そして透明には白透、銀用白透明などです。それぞれ濃さ、堅さなど違いがあり、いろいろ使ってみて自分が好きな釉薬を見つけるのも楽しいです。

七宝炉

七宝焼の焼成に使う炉は一般に流通している炉内の大きさは一辺が20㎝ぐらいまでのものが多いです。油絵などは100号とか大きな壁画とかその大きさのキャンバスに描いていきますが、七宝はいくつかの大きさ、炉に入る大きさに銅板を切ってそれをつなげて1枚の作品にしていきます。写真の作品も縦が1mほどありますが、6つと8つのパーツに分けて制作しています。

銀線七宝

七宝焼きというと銀線七宝を思い浮かべる方も多いと思います。

銀のリボン線を図案に沿って曲げそれを板の上に植線していきます。

花びらや葉っぱ葉脈などを銀線で区切りそこに釉薬を入れていきます。

絵画のような美しい七宝になります。

銅線七宝

銀線七宝に比べると迫力のある感じになります。

押谷流と呼ばれる技法

昨年8月の協会展で故押谷和芳先生の作品を札幌にお住まいのご子息の許可をいただき展示させていただきました。押谷流と言われるその技術はたいへん難しいもので、まず電鋳板に0.25紺青などの釉薬で960度ぐらいの高温で焼成します。このとき低温でもだめですし、焼ききれてもだめ、また釉薬を厚く盛りすぎても輝きが出ません。それから何回も釉薬を注して焼成します。先生は個展などもされなかったので、実際の作品を目にされた方は少ないと思います。

輝き・発色は素晴らしく会場で賞賛する声を多く聞きました。

アルミ箔

七宝には普通銀箔や金箔、プラチナ箔を使います。金箔やプラチナ箔は高価なので一番多いのは銀箔でしょうか。家庭のキッチンに必ずあるアルミ箔も使えます。融点がとても低いので素地として使うことはできませんが、最後の焼成の時に使うと面白い模様になることがあります。写真の上の方の銀色っぽい模様のところがアルミ箔を使ったところです。

2人のなみかわ

明治時代を代表する七宝の巨匠は有線七宝の並河靖之さんと無線七宝の涛川惣助さんです。

並河作品は京都の記念館があり観ることができます。(現在改装中で閉館しています)

涛川作品は迎賓館、花鳥の間にあるそうです。どちらの技法も素晴らしいものです。


是非機会がありましたらご覧ください。


噴釉

釉薬の伸びる性質と縮む性質を利用した技法です。

まず、不透明の釉薬を少し厚めにのせて焼成します。

次に透明の釉薬を薄くのせて焼成します。

下の釉薬が上の釉薬を押しのけて模様となります。

噴釉しやすい釉薬を探し、また焼成温度でも変わりますので、

いろいろ試してみてください。

写真はまだ七宝始めたばかりの方が作ったものです。

素地について

七宝の素地としては銅板が最も多く使われています。

純銅板

一般に銅版と呼ばれています。釉薬との密着性がよく、立体などの作品によく使われます。中赤などの赤系釉薬は直焼きの場合本来の色を発色せず、黒っぽくなりますので、白透を先に焼き付けてから施釉・焼成します。

丹銅板

銅に約5%から10%の亜鉛を混入した合金です。中赤などの直焼きができ使いやすく、市販されている七宝アクセサリー素材の無地板は丹銅版が多いですが、彫金板には純銅版もありますので注意が必要です。同じ合金の真鍮板は亜鉛が20%以上入っていて七宝釉薬とは密着しませんので素地としては使えませんが、真鍮線を部分的に七宝に使うことはできます。




転写シート

七宝の仕上げに転写シートを使うことがあります。写し絵の要領で使いたい部分を切り、

水につけて厚紙を剥がし、貼りたい場所に水分をとりながら貼ります。

よく乾かし800度弱で焼成します。


白色、金色、多色の模様などいろいろあります。

詳しくはスタジオサカミの材料カタログをご覧下さい。